紅葉にはちと早い。ポッカリ空いた半端な時期。
そうだもう一度裏道。今日は下から歩いてみよう。ついでにブロックでも運んでやるか。
数百回に及ぶ御在所通い。なのに藤内小屋に泊まった事は一度も無い。それでもなんらかの形でお世話になっている。北谷小屋によく泊った事があるが、その鍵は藤内小屋に預かって貰っていたのである。
夜遅くにやってきて、「××の○○ですが北谷小屋の鍵をお借りします。」当時顔は覚えられていたかもしれないが、【××さん所の若い子】程度の見識だったのだろう。そして20年のブランク。とっくに忘却の彼方へ去っているに違いないが、こんな時にこそそのお返し。
そして降りはスカイライン。通過が困難と聞いているがどの程度か確かめてみたいし。
6:55 a.m. 湯ノ山最奥駐車場着。
「ん? なんじゃこりゃ。」登りついた所の路肩に車が停まっている。奥の駐車場を見ると側面に縦列駐車。
「おいおいまたかよ。ほんとに考え無しなんだから。」困ったものです中高年。(かどうかは解かりませんが。)ちゃんと縦に停めれば4-5台は多く停めれるだろうに。
こんな所で路駐など私には出来ない。スカイラインゲート前に移動する事にする。
「えろう遠周りだなあ。ガソリンの無駄と余分に排出したCO2、どうしてくれるんだい。俄かエコロジストの皆さん、見るべき所を見誤っていませんか?
7:05 a.m. スカイラインゲート着。
既にここにも数台が停まって準備中。大声で裏道の様子を説明している人がいる。通れないとか言っているが、私ゃ先週通ってます。得意に喋っている所に割って入るのも失礼なので知らんぷり。諦めて他所へ行って貰った方が静かで良い。(僕って意地悪?)
7:15 a.m. でっぱつ。
半袖Tシャツではちと寒い。が、我慢して行く。歩き出せば身体も暖まってくるだろう。
暫く行くと路肩に割れ目が。覗き込むとアスファルトの下は空洞。「お〜、恐〜。」
写真を撮ろうとガードレールに寄りかかるとグラリ。支柱も宙ぶらりん。
一見なんでも無いようでもあちこち危険がいっぱい。
しかし今日は良い天気。すっかり秋らしくなり爽やか爽やか。
ふと道路沿いの杉を見ると雄花の花芽がしっかり成長している。来春も花粉がいっぱい飛散して悲惨?
キョロキョロよそ見しながら歩いていたらもう直ぐ蒼滝橋。
7:35 a.m. 蒼滝橋を越え裏道へ。道端にはバケモノソウ。いやアケボノソウ。
堰堤横の広場にはブロックが無い。あんなに沢山あったのに、もう皆運び上げてしまったのか。ボッカトレーニングが出来なくて残念!(実は、ホッ。)
肩透かしをくったような嬉しいような…。裏道を行く。
8:05 a.m. 藤内小屋着。
先週は作業中の人が多くてあちこち見て周れなかったが今日はまだ誰もいない。これ幸いとばかりにあちこち見てまわる。私ゃ出歯亀か?
小屋の南側の土石流は中道ザレ場下流からの押し出しのようだ。
広い河原と化した北谷を行く。先週と違いピーカンの快晴。周りの様子も良く解かる。
8:25 a.m. ピョンの耳着。
先週は河原を歩いたが今日は整備された巻き道を取る。高度感がありこっちの方が恐い。それに邪魔な木立が無くなり直ぐ隣は北谷がパックリと大きな口を空けて人が落ちてくるのを待っているようだ。見通しが利き常に藤内を左前方に眺めながら行く。「前より景色が良くなったんじゃない?」
8:40 a.m. 藤内沢出合着。
遥か上には北谷の滝があった所が行く手を阻むように立ちはだかっている。河原は遠慮して整備された巻き道を行く。
足元には気の早い紅葉が一葉。
そして滝の跡。大分様子は変わっているが新たに滝がかかっている。元々傾斜の強い所だからあたりまえか。
手前の木は一部紅葉している。
8:50 a.m. 滝上に出る。菰野の街並みが綺麗。遠望が利き如何にも秋日和である。
谷が近付く度に谷へ出ていたんじゃちっとも進まない。ほんとtanuoさんは道草が好きである。
ザレ場の旧道が流されている。その手前に看板だけが虚しく残されている。さっ、巻き道に戻ろっ。
ぼちぼち前壁。
見上げると紅葉。「へ〜、もうこんなに色付いている。」
そして最上部の崩落箇所。
北冷水の沢からの崩落とばかり思っていたが違っていた。前尾根P-1の奥の北斜面からの崩落だった。今日は天気が良いので様子が手に取るように解かる。
暫く沢沿いに行き、峠が近付いた所で裏道に戻る。
かつて陽光に輝く緑の園があった。
かつて幾筋もの沢が流れる谷間があった。
かつて真っ白の雲が高く浮かぶ青空があった。
かつて自然の慈しみの中にそれらはあった。
私達はその緑の園に遊ぶ仲間だった。
緑の園は無くなってしまい真っ白の土石が陽に焼かれている。
谷間からかつての沢筋は無くなってしまった。
私の心を吹き抜ける寒風と共にそれらは去ってしまった。
離れ離れになる夢と共に仲間達も去ってしまった。
日がな一日うろつきまわっていた緑の園はどこへ行ってしまったのか?
私には解からない、なぜこうなってしまったのか。
どうやって探し続けられるというのか、暗雲が陽を閉ざしている時に。
唯一これだけが解かっている。「ここにはもう何も無い。」
私が愛でていたものは何一つ残されていない。
でも私は待ち続ける。それらが戻ってくる事を。
私は待ち続ける。それらがもとどおりになる日を。
そのままで良い筈が無い。自然の怒りに翻弄されたままの姿なんて。
そのままで良い筈が無い。元の姿に戻らないなんて。
北谷の緑の園よ、再び私のもとに戻れ。
う〜ん、如何にパクリとは言え、詩人やなあ〜。
と言いながらも、この荒廃した北谷も嫌いじゃありません。なぜかこういった荒々しい所ってワクワクしますよね。
9:20 a.m. 国見峠着。
御在所へ向かう。この辺り紅葉が綺麗。このところ朝晩の冷え込みが厳しいのか良い色付きである。この分だと今年の紅葉は早いかもしれない。
樹林が切れると伊勢平野の広がりが見渡せる。釈迦の向こうには白くない白山が。ずっと右にはこれまた白くない乗鞍岳に白くない御嶽山。
9:40 a.m. 御在所山頂遊歩道に出る。
久しぶりに望湖台へ向かう。秋晴れの下、柔らかな陽射しを浴びながらの漫ろ歩き。
三角点への登りでは紅葉の絨毯。
9:55 a.m. 望湖台着。
時間的に遅い所為か、それとも行楽シーズンの所為か、今日は人口密度が高い。家族連れがいっぱいで場違いな格好のネクラ小父さんは肩身が狭い。記念碑の裏側でカップうどんでも食うか。
10:00 a.m. 記念碑まで移動し久々のおさんどん。
エッヘッヘ。Netで買ったP-113の使い初めで〜す。
ガスにしては風に強い。炎の形状からか熱効率が良いようでお湯が沸くのも早い。ガスバーナーをバカにしていたが技術進歩は日進月歩。下手なガソリンよりスグレモノかもしれない。(¥5,850.も出したんだからそう思いたくもなります。)
ただ周りが静かな所為か音が凄く大きいように思います。ガスってもっと静かだったんじゃあ? そうか、風に強いのは音も大きいのかな。ガソリンコンロみたいに。
そうこうしているとここも人が多くなってきた。わざわざ裏側なんか来なくてよいのに来る度に覗いて行く。
犬みたいに「ワンッ!」と吠えたろか。
10:35 a.m. お腹も膨れたところででっぱつ。
スカイライン通過に梃子摺ってもまだこの時刻。余裕たっぷり軟弱Hike。
峠道を行く。チラホラ色付きかけ。10月末くらいが見頃かな?
11:05 a.m. 武平峠通過。スカイラインへ。
降り始めるといきなり道が崩落。「うんうん、いきなりかい。」
倒木を押しのけ掻き分け行く。
峠からの本流と御在所よりからの支流の出合も御覧の様子。けっこう上流から崩れているんだなあ。
スカイラインに降り立ち前方を見る。「んにゃ? あんな所にバリケード?」
駐車場横の法面工事の横が崩れている。ここまで工事してれば崩れなかっただろうに。崩れた土砂はスカイライン真下の登山道も覆っているようだ。
駐車場端のカーブ辺りも土砂に覆われている。先々週鎌ヶ岳側から見えていた所だ。という事はここは西多古地じゃなかった。一本西側の谷だった。
しかしグチャグチャだなあ。下の方はアスファルトが波打っている。舗装も薄い。手抜き工事じゃないのか?
そして西多古地。滝の岩盤があちこち白く変色している。落花してくる大岩が当たり岩が剥がれた跡か。
スカイラインも溢れた土砂でいっぱい。
その先には異様な景色。そうか東多古地谷の手前のスカイライン、コンクリートを吹き付けただけの法面が崩落したのか。どうやらここが本日の核心部のようである。
フェンスを突き破り崩壊した土砂は遥か下の道路にまで流れ込んでいる。
フェンスに引っ掛かり辛うじて止まっている土石の上を乗り越える。フェンスで浮いている所為か歩く度に揺れる。ワイヤが外れたり切れたりしたらそのワイヤの踊りに跳ね飛ばされ遥か下まで宙を舞う事になる。恐いからこんな所は速く行っちゃえ。
難関を過ぎ表道に合流。もう後は大丈夫だろう。
途中で数組の人達とすれ違ったが物好きな人達だなあ。あっ、人の事は言えんなあ。僕もその一人。
修行場跡を通過。無事を感謝して拍手。
もう少し梃子摺るかと思っていたがチョット呆気なかった。まっ、いいか。
11:35 a.m. 三ツ口ダム通過。ここの湖水も土砂に埋まったまま。またGreenfieldsの歌詞が頭に浮かぶ。
Greenfields are gone now, parched by the sun.
Gone from the valleys where rivers used to run.…
途中からまたスカイラインを行く。閉鎖中のおかげで車も来ない。道端の秋を愛でながら漫ろ歩き。
途中取付道側の駐車場に目をやる。
今朝の非常識縦列駐車の車は居なくなっており、その後にはちゃんと横に並べて駐車してあった。しまった、もう少し待っていればここに駐車できたかな?
そこで思い出した。車はまだ遥か下、スカイラインゲートの下なのだ。急に足取りが重くなる。「ああ、アスファルトでまたソールが磨り減ってしまう〜。」
12:25 車に帰着。片付けものを済ませ温泉に向かう。
??? 両側には路駐の列。なんと鳥居道入口のカーブまで続いている。狭いところでは対向車とすれ違いが出来ないほど。「よう、こんなとこに停めるなあ。私なら諦めて帰ってしまいます。」
10月の3連休。やはり行楽シーズンなのでしょうか。
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