今日から9月。
こちらの感覚とは無関係に暦だけは着実に進んで行く。
いくら暑いといっても一時期ほどの暑さでもあるまい。それじゃあ久しぶりに御在所でも。
健康管理にゃ歩くが一番。
6:55 a.m. 蒼滝橋駐車場には常連さんの姿。声をかけトンネル西側の駐車場へ車を置きに行く。
おにぎりを頬張りながら仕度をする。先週放り込んでおいた家財道具をまたザックから出す。ガサガサになったところにメットを放り込みなんとか膨らます。
7:10 a.m. 常連さんと合流し裏道を行く。
夏場のクソ暑さはないが、まだまだお世辞にも爽やかなぞと言える気候ではない。おまけに今日は天気予報が狂いピーカンの晴天である。雲ってくれれば多少涼しくなるだろうに。晴れ男も善し悪しである。
Iさん夫妻は何故かザック以外に荷物を持っている。藤内小屋の写真展に出展する作品だとか。何事にも積極果敢な人である。
藤内小屋で作品を渡し、暫くテストストンでお遊び。そういえばIお父さんも今日はスカルパの靴を履いている。ペタペタ靴以外で練習かな?
8:00 a.m. ピョンの耳着。抜けるような空の青さに藤内の白い花崗岩が眩しい。何度見てもここからの景色は最高だ。【鈴鹿のヨセミテ】とでも名付けるかな。
ススキの穂が秋を感じさせるが、ヨセミテにススキなんて無かったよなあ。
8:15 a.m. 藤内沢出合着。やはり湿気が少ないのだろう。バットレスのコントラストが強烈だ。
菰野の街や伊勢平野の田圃の色が綺麗だ。
8:20 a.m. テストストーンでお稽古。
今日は人が少ない。ぼちぼちフルコースで行こうかと思っていたが、久しぶりで気乗りがしない。大所帯でもある事だしまたまた軟弱コースをとる。
9月とは言えまだまだ日差しが眩しい。空気の透明感と相俟って何もかもが輝いている。グラサンしててもこの眩しさ、花崗岩はやはり明るい。
それでいて日陰に入ると冷んやりと涼しい。チムニーの中からもう外へは出たくなくなってしまう。
途中の尾根道にはタツナミソウのようなオドリコソウのような小さな花がそこらじゅうに咲いている。昔はこんなものには目もくれなかったのに、やはり年とともに落ち着きが出てきたのだろうか。(ひとり悦に入っている。)そしてまた花博士が珍しい花を発見。新種かもしれないと早速写真撮影。ついでに私もパチリ。こんなにのんびり出来るのも貸切状態のおかげである。昔とは隔世の感がある。(30年も違えば当然か。)
いちいちザイルを出すのも面倒なのでコンテで行く。皆さん手馴れたものである。
10:10 a.m. P4はスタカット。仕度をしてる間に私は写真撮影。
本当に静かだ。一壁に数人、バットレスに一組。コールもなにも聞こえない。聞こえてくるのは北谷から聞こえる団体さんの声だけ。「しかし騒がしい連中だなあ。」ボリュームいっぱいのラジオの音も聞こえる。
Iお母さんはここが一番楽しいという。フル1ピッチあるし、ホールドも豊富だし、今が楽しくて仕方の無い時期なのだろう。
10:50 a.m. P3チムニー下のY級フェイスで遊ぶ。私は上で確保
準備の間に写真でも。
お稽古開始。楽しみながらぶら下がってくれる。肩絡みの確保ではしんどい。途中でグリップビレイに切り替え。
「ふ〜、やはりこっちの方が楽チン。」
全員登り終え、チムニーの上でランチとする。他に誰も来ないので出来る、【レストラン前尾根】のランチ。
絶景をお菜に優雅なランチである。どこの高級料亭のディナーより、ずっと豪華な食事である。実に空腹と最高の景色は至高の調味料である。
100円そこそこのパンが?万円のディナーより高級品になるのである。これほどのパフォーマンスの高さを私は知らない。
そしてIさんからは、水分たっぷりの梨と巨峰を振舞われる。豪華なランチにこれまた豪華なデザート。渇いた喉にフルーツの旨さは格別である。「あ〜、生きている事を実感する〜。」
すっかり寛ぎ横になると瞼が自然に閉じられてゆく。真っ白の雲が流れ、それが日陰を作ってくれ渡りに船。微風ながらも涼風が爽やかさを届けてくれる。
「いかん!」本当に寝てしまいそう。
12:40 出発。
早々と道具を片付けノーザイルでヤグラのコルへ、そのまま前壁側へ降りる。
「鎌まで行く。」とひとり気をはいていたOさんも軟弱が伝染したのか一緒に前壁へ。
前壁ルンゼは本当に久しぶりである。岳連の確保の講習会以来じゃないかな? 下まで降りると古タイヤがまだ置き去りのままであった。巻きつけられたザイルも真っ黒のボロボロで、あの頃以降は全く使われていないのではないか?と思わせる程の劣化ぶりである。
ついあの頃の賑わいを思い浮かべ感慨に耽る。
13:10 北谷を渡り裏道に合流。
昔はこの辺り、もっと開けていたように思う。
かみさんを始めて連れてきた時も前壁から降り、この辺りで休憩したのだった。
終始緊張で引きつったままだったかみさんが、ここまで降りてくるといつもの笑顔に戻り冗談を飛ばしていた。その両極端さがなぜかいつまでも記憶に残っている。
さあ、後は裏道から戻るだけ。
写真展で大賑わいの藤内小屋で一休み。写真だけでなく絵画や手書きの漫画もある。山に限定していないのも自由で良い。
やはり文化というものはこういったおおらかさが大切だ。権威に囚われない自由な発想が文化の根源だと思う。
19世紀初頭、サロンに敵対して起こった【アンデパンダン】がふと頭をよぎる。
一休みの後、往路で見かけた【ナントカソウ】を撮影してから駐車地へ。
15:00 車に帰着。
4週間ぶりの湯ノ山の温泉を満喫し帰途に就く。
我家の【水道水温泉、田圃の湯】よりのびのびゆったりできて良い。
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