星を仰いで家を出る。少し雲があるが薄い。「まずまずの天気かな。」
車の中が寒い。エンジンが温まるまで暫し我慢。
6:50 a.m. 料金所跡駐車場着。さすがに師走。まだ1台しか停まっていない。
おもむろに仕度にかかる。
7:00 a.m. でっぱつ。道路脇には名残の紅葉。御在所もまだほんのりと赤みが射している。
冷んやりとした大気を感じながら行く。今日も中道。山も静けさを取り戻したようだ。
7:40 a.m. 岩棚着。
鎌山頂付近に薄雲がかかっている。
里には靄が漂い景色が判然としない。
晩秋から初冬にかけてのこの靄が好きだ。
幼い頃に見た風景を思い出す。祖母に連れられ田舎へ行く途中の電車の窓からの景色だ。
南側、やや逆行気味ではあるが、野焼きの煙と靄が一体となりぼんやりと田園風景が目に映る。北側に目を遣ればあちこちの野焼きの煙が真っ直ぐ上に立ち上がりそれが一定の高さになると層をなし真横に広がる。上下の大気と混ざり合う事もなく真横に広がっているだけである。柔らかな陽射しに、その光景がいかにも暖かそうなのである。
今ではどこの田舎でももう野焼きは行われなくなってしまった。景色と相俟ってあの芳しい香りももう味わう事は出来ないのである。
新興の住宅地が進出し、「煙い、洗濯物に臭いが付く、洗濯物が汚れる。」などとクレームが付き、農家もさぞ戸惑った事だろう。中には「ダイオキシンが発生する。」とまで言う人もいるそうである。昔の藁は化学肥料も使っていないピュアな有機物でしかなかった。塩素を含むゴミでも焼かない限りダイオキシンなんて発生しようがないのにも拘わらず、である。
なんにしても、私の心の原風景のひとつが見られなくなってしまったのは寂しい事である。
辺りの木はすっかり葉を落とし冬枯れの季節。それでも枝の先にはしっかりと来年の新芽が用意されている。
7:50 a.m. 地蔵岩着。
真っ青の冬空の下、軽快に歩を進める。
8:10 a.m. 北谷テラス着。
この辺りから日陰に霰の融け残りが目立つ。こんなものでも嬉しくなるから不思議だ。
8:40 a.m. 朝陽台着。
カモシカセンター前の日溜まりで休憩。11月末で閉鎖となったらしい。
これだけ御在所通いをしておきながら、一度も入った事が無いのも珍しい存在である。そういえばロープウェイもまだ一度も乗った事が無い。一度くらい話の種に乗っておいても罰は当たらないのだが…。(哀しいかな、まるビ親爺)
9:10 a.m. 望湖台着。一面冬枯れの季節。
早々に武平峠へ向かう。
9:35 a.m. 武平峠通過。鎌ヶ岳へ向かう。
三ツ口谷ドンツキから御在所を望む。
10:20 a.m. 鎌ヶ岳山頂着。
拍手の後、リザーブシートで小休止兼燃料補給。
風も無く陽射しが強くポカポカと暖かい。日に焼かれ頬がつっぱってくるようだ。
ついこの前まで忌み嫌っていた暑さが懐かしく思える。人間なんて勝手なものである。
近くで得意げに山の名前を説明している人がいる。
「仙ヶ岳の右が宮指路。」(仙ヶ岳は双耳峰、右側は本峰でしょ。宮指路は本峰手前)
「アンテナがあるのが、ノトヤマ。」(ノノボリヤマ【野登山】の事らしい。)
「建物が見えるのが御在所。その隣が国見岳。」(国見岳は鎌ヶ岳からは見えないでしょ。)
しかし日本語は難しい。漢字だけでは読みが解からない。野登山のお寺の名前をケイソクサンヤトウジ【鶏足山野登寺】と読むくらいだからノトヤマでも文句あるまい。御在所の事を昔は国見岳と呼んだこともあるそうなのであながち間違いではないやも知れぬ。
昔、水沢岳をミズサワダケと言ったら笑われた事がある。読み仮名がふってなきゃ誰だってミズサワダケと読みますわなあ。ホント日本語は難しい。
ボチボチでっぱつ。降りはどうしようかなあ?
10:40 a.m. 出発。また白ハゲ経由で長石谷、犬星滝から三ツ口谷に抜けるかな。
岳峠から見上げる鎌本峰が綺麗だ。青空ってなにもかも綺麗なものに変えてしまうんだなあ。
11:05 a.m. 白ハゲ着。
雲母峰分岐を左折し暫く行くとラピュータの木。これももう来年の新芽を枝いっぱいに付けている。自然って凄いなあ。
11:25 a.m. 犬星滝着。傍には名残の紅葉。
滝を巻き沢を遡上する。
長石尾根に出た所で尾根を降る。ちょっと端折っちゃいました。
分岐で三ツ口谷へ折れそのまま三ツ口谷を降る。
12:45 車に帰着。この時点で空には雲が広がり始める。
そして温泉に向かい走り出すと、窓ガラスに水滴がポツポツ。
今日も晴れ男の面目が保てました。
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