私(A) せっかくの夏休み、たまにはどこか遠くへ行きたいね。
予算が無いなら中央はどう? 滑川からどこかの沢をつめて降りは上松尾根で。
 
私(B) おいおい、俺達もう5?才だぜ。いつまでも若い頃のつもりでいても身体はついてこないぜ。
まして20年以上行ってない所は初めてと同じ。おまけに相棒無しの確保無しでってか? 
それにこの時期水量も多いし。あまりになめちゃあいませんか?
 
私(A) うーん、確かに!
でも毎度毎度、遠出が御岳ではあまりにも侘しすぎる。
上松尾根ピストンで山頂付近で1ビバーク入れるって事でどう?
 
私(B) うーん、1ビバークくらいなら、まあいいか。予算があれば小屋泊まりしたいけど。
 
私(A) なにを軟弱な事言ってんだよ!
夏だよ、夏。 裸で寝てても死にゃしねーよ!
 
  こんな悶着が有りまして今年の夏は久しぶりに中央アルプスとなりました。
はてさて、この後どうなります事やら。


20040809

1ビバーク入れるとの事で食料も若干多めに。
夜のメインデッシュは【どんべいてんぷらうどん】。行動食+嗜好品として、カロリーメイトとその類似品らしきもの(こちらの方が外装の絵が旨そうだった)、それにリッツチーズサンドと4片\100のベビーチーズ等を買出し時に追加する。
行動食ってどうしても甘い物になりがちで、食べたくなくなる(その方が好都合)のですが、クラッカーの塩味は食欲増進に有効です。

久しぶりの中央なので、地図を! 
30年前の山渓のアルペンガイドではあてにならないだろうし、Netで国土地理院から25,000分図をプリントするが部分的に欠けてしまい上手く印刷できないし、また縮尺もあてにならないし。
思いきって鳴海の正文館へ行く。が、現物を見て、「お金を払ってまで買うほどのものでもないな。上松尾根だけなら道に迷う事も無いし。」としみったれが顔を出す。結局地図無しで出かける。
世の山の達人なる人々からすると、とんでもない事をまたやらかしてしまった。

前日午後9時頃に自宅出発。
順調に19号線を辿り上松市街地に入った所で、はたと迷う。アルプス山荘の看板が無い!
「まあいいや、山の方へ向かう道をとればどこかへ出るだろ。」ところが、バイパス工事で様子が変わってしまい、行けども行けども記憶の無いところばかり。こんな時は野生の勘を働かせる。
なんとか敬神の看板を見つける。が、道中全く記憶のない所ばかり。20数年の間にこんなに変わってしまったのか。
やはり初めての所と思った方が良さそうだ。
なんとか登山口に辿り着き車の中で就寝。


8月9日 6:00 a.m. 起床。
6:30 a.m. 準備をして出発。

登山道の看板に導かれ野を越え丘越え進んで行く。昔は道路からすぐ北股沢を渡り、敬神まであっという間だったと思うが、工事で規制されあちこち遠回りさせられ、敬神まで30分もかかってしまった。
それに敬神小屋前の滑川には立派な堤防が出来ており、その上はアスファルト舗装の車道になっている。敬神小屋前には軽自動車が泊まっていた。小屋の人には便利になったものだ。
7:00 a.m. 敬神小屋着。小屋の前の流れの辺りを見まわす。ミズ(山菜のウワバミソウ)が繁茂している。「ああ、まだ有るんだ。」
橋の上で昔の記憶を辿りながら周りを見回していると、小屋の人が道が解らないと思ったのか手で指し示してくれる。解ってるよと手で挨拶する。

上松尾根に取り付く。単調な樹林帯の登り。変化も眺望もなく暫し我慢の子。
唐松の落葉が辺り一面に堆積し、特有の芳香を発している。踏んでも軟らかい感触はとても心地良い。
暫く登ったところで、はたと気付く。「水を入れ忘れた!」
敬神小屋で道を指し示してくれた人の好意があだになり、うっかり忘れてしまったのだ。
ここまで来て戻ろうとは思わない。
朝飯に飲んだペットボトルのお茶が1/3程残っているので、金懸の水場で補給する事にする。

空は薄曇。所々青空が覗いている所もある。昨夜はパラついていたが、ずっとこんな天気だろう。暑くなくて良いや。でも、今夜も夕立が来るかもしれない。

上松尾根の記憶というと、木曾前岳の降りのチムニー、尾根上の丸い禿頭状の小ピーク、金懸小屋の玄関、樹林の切れ目から見える真正面の御岳、紅葉の光のシャワーに明るく染まった相棒の顔、くらいしか無い。
歩いてみれば断片的にいろいろと思い出すだろうと思っていたが、全く思い出すような場所は無い。
そして金懸小屋まで来てしまったが小屋も建替えられたのか全く記憶に無い形状だ。玄関もアルミサッシの引戸になっていた。
こりゃ、上松尾根も初めてのコースと思った方が良さそうだ。

てな事で、8:30 a.m. 5合目金懸小屋到着。
樹林の切れ間で明るくなった周りを見回すと、トリカブトの群落。綺麗なバラには棘がある。可憐なトリカブトには毒がある。

小休止もそこそこに金剛水の水場へ。
「あれ!水が無い。」 岩の間に挿し込んだホースの端からポタポタ程度で水が滴っている。
あまりきれいではないが山頂までもつ訳ないので、水筒の口にホースの先をあてがい溜るまでもう一度休憩。
この間に写真撮影やアンパンを半分ほど齧って時間待ち。

ほぼ満タンになったところで味見。「うん別に変な味も臭みもない。どちらかというと旨い方だ。」

9:25 a.m. 六合目着。順調に高度を稼ぐ。

7合目を越えると部分的に視界も利き隣の三の沢岳が大きなシルエットを現す。
天気も良くなり陽が射し始める。暑い!でも鈴鹿の暑さではない。一応これでも日本アルプスのはしくれ。湿度は割りと高めだが吹く風は爽やかだ。
この辺りまで来るとナナカマドも姿を現し始める。中にはもう色付き始めているものもある。


10:10 a.m. 天の岩戸なる所を通過。どれがそうなのか知らないが昔はこんな立派な看板なんて無かった。途中にも立派な看板があちこち立てられており、登山道も凄く整備されている。

そして断片的に残っていた記憶と符合するような所はどこにもなかった。やはりここは初めて来た所と思った方が良さそうだ。

8合目が近付くと崩壊地や主稜線が望まれるようになる。
足元には終始名前も知らない可憐な花が咲き乱れ心が和む。


11:15 a.m. 8合目着。

このすぐ上辺りからハイマツ帯となり前岳と山腹道に分かれる。山腹道って通った記憶が無いのと時間的に遅れ気味であることからこちらにルートを採る。
これが大正解。途中の看板にも【お花畑】とあったが、沢山の花々の大競演。種類こそ多くはないがその数たるや、尋常ではない。
「木曽駒にこんな所があったのか。」何度となく訪れていたものの、真夏のこの時期なんて来た事がない。やはり木曽駒は今の私にとって初めての山。

また、目と鼻の先には主稜線が迫っている。
下から仰ぎ見る前岳の岩塔も凄い迫力で迫ってくる。


12:25 すずり岩着。
下から来ると立派な看板だけが目に付きなんのことか解らなかったが上から見ると平らな岩の上に水が溜っている。
なるほど。硯に見える。昔はこんなに丁寧な案内も無かったし、朽ち賭けのものがあっても見向きもしなかった。
齢50も過ぎると見えるものが違ってくるのか、余裕ができたのか?

すずり岩の上にあがるとついに駒本峰が姿を現した。出発から6時間。久々の長時間登行だ。
目を凝らすと山頂の人影が視認できる程の距離だ。
多少ガスっているが中岳、宝剣と主稜線のメジャーな峰々が真正面に見える。


12:45 玉ノ窪着。
駒本峰はもう目と鼻の先。でもこの距離がまだ半端じゃないんだよなあ。
振り返ると前岳への登路。


玉ノ窪を過ぎると急に足取りが重くなる。見晴らしの良い岩の上で景色を愛でながら燃料補給。さすが中央アルプス。鈴鹿なぞ比べようがない景観だ。この息苦しくなるような迫力。近寄り難い威圧感。


13:15 出発、最後の登りにかかる。
フリクションのよく効く花崗岩の上を一歩一歩と歩を進める。

13:35 駒本峰着。

草臥れました。延々7時間の階段歩き。久々の上松尾根。きつい事ではかなり有名ですが、やはりきつかった。
---Richな中高年はロープウェイで山頂漫歩---といくところなのでしょうが、私のようなPoorな中高年は、高速代、ロープウェイ代が払えず経済的な自前の足に頼る他ありません。
祠にお参りの後、水の確保の為水場へ向かう。
馬の背から濃が池経由で岩清水へ・・・ここの水場なら涸れてる事はないだろう。
中岳のコルへの分岐を分け、馬の背に差し掛かった所でポツリポツリ。辺りは既に薄暗くなりとうとう降りだす。急ぎ傘を出す。 夕立か? 凄い土砂降りだ。
水場まではまだかなりの距離がある。そこから稜線までは結構登らなくてはならない。
金懸の水場であんな状態だったから水があるという保障は無い。
水場まで降ったわ、水はなかったわ、水なしで登り返さなきゃならないわ、水なしでビバーク、なんて最悪のパターンが頭をよぎる。
水さえあれば適当に岩屋を探しツェルトを被って早々と穴篭りしてしまうんだが・・・。
この勢いで降り続くのならポリ袋で雨水を集めてって事も考えるが、めんどくさい。
時刻はまだ14時前。引き返すなら今が限界。と思った瞬間身体が勝手にUターン。中岳コルから本峰の巻き道を通って玉ノ窪へ。と引き返す道順が勝手に頭に浮かんでいる。
逃げ帰る為の頭の回転は相変わらず速い。
中岳のコルで宮田小屋の様子を窺う。営業しているのかどうか解らない。テントは結構張ってあるが水はどうしているのだろう? 小屋で溜めた天水を買っているのだろうか?
土砂降りの中、水を分けて下さいなんて言いにくいし・・・。やはり降りちゃおう。
コルから本峰山腹道を辿る。既にズボンはベタベタ。かみさんに買ってもらったこのWhole Earthとかのズボン、全くお粗末だ。濡れると膝がつっぱって歩き難いったらありゃしない。おまけに乾きも悪く、とても山用とは思えない。知識経験のない人達がこんなのを信頼して買っているとしたら遭難の誘引になりかねない。私の拙い経験からすると、ポリエステルのゴルフズボンが最も良かった。

山頂からの道と合流する頃には、雨も小降りになる。
玉ノ窪はもう目の下。
色は白いがリンドウのような蕾がそこら中に膨らんでいる。

登りで休憩した所で再度休憩。暫くすると雨も止み、所々陽も射しだした。

一瞬下山をはやまったかな、と思ったがこの様子ではまた降り出しそう。遠くで雷も鳴っていたし、明日は晴れるかも知れないが、今夜はまだやばそう。今日中の下山は勇気ある撤退。という事にしておこう。

14:40 下山開始。まだ小雨が降ったり止んだりなので前岳はパス。往路と同じ巻道を採る。
15:25 8合目着。ナナカマドの葉に宿した雨の雫が輝いている。

15:55 7合目通過。

6合目辺りから足がヨレヨレになってくる。大体降り4時間と思っていたが、この様子では一寸きつそう。かと言って明るい内に降りてしまいたいし・・・。
曇っている事だし、夕暮れに備えサングラスから眼鏡に替える。
相変わらず降ったり止んだりで傘は手放せない。薄暗くなった樹林帯の中をひたすら降り続ける。足元も滑りやすく中腰で降りるので余計に足に負担がかかる。つい声に出して弱音を吐きたくなる。---年寄りっていやね。

17:55 やっとの想いで敬神着。滝の水を腹一杯飲む。「うっ、旨い。」 最初からこの水を補給してあったら、今頃は山頂の岩陰でツェルトを被り雷に怯えていた事だろう。世の中何が幸いするか解らない。という事で今日はHappyだったって事にしておこう。
それにしても草臥れたなあ。まだ車まで30分ほど。
小屋の前にはエスティマが停まっている。次は是非ここまで車で入らなくっちゃ。

18:25 車に帰着。もう辺りは薄暗くなっている。明るい内に帰ってこれて良かったなあ。冬場じゃあもう真っ暗な時刻だ。
温泉は諦めそのまま帰途に就く。


2004年08月11日12時35分00秒

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