3月21日(金)春分の日。6:00 a.m. 頃、目覚める。
日の出はまだだが、遮光シートの隙間からもれる東の空の輝きが強烈だ。既に上空は真っ青でひとかけらの雲も無い。
カメラ片手に早朝散歩。さすがお彼岸、冬場の刺すような大気の冷たさはない。それに全くの無風。これならゴンドラの運休も無いだろう。
御岳ロープウェイスキー場(以下、御岳ロープ)に来なくなってもう何年になるのだろう。ここは歴史も浅く、考えてみればできた当初足繁く通っていただけのようだ。
当時スキーブーム真っ最中で、どのスキー場も混雑が激しく全くの売り手市場だった。
そんな中ここは他に比べて道路状態が悪く、4駆以外は敬遠してくれていたようで比較的すいていた。
その後、老舗の御岳スキー場にもゴンドラができ、ボーダーを乗せない事からリフト待ち(ゴンドラ待ち)がゼロ。という事でそちらに替わってしまった。
子供達がまだ小さかった往時を偲びながら、まだひとけの無いセンターハウス付近を徘徊する。
8:00 a.m. 準備を済ませでっぱつ。
ゴンドラは 8:30 からの営業なので、まずはリフトを乗り継いでいく。
本当に良い天気だ。風も無くポカポカと暖かい。が、雪質は(べた)じゃなく(ガリ)だ。この雪なら板も良く走るだろう。
右隣には御岳スキー場の山頂駅が良く見える。正面には御岳が真っ白の巨体を横たえている。
後ろには中央の山並みが霞みの上に聳えている。
第二リフトに乗っている時、ゴンドラの営業開始の案内放送。
左手の斜面が思った以上に急に見え少し不安を覚える。最近は御岳の緩斜面しか滑っていないので身体が反応してくれるかどうか・・・。
でもここから降りてゴンドラに乗る事にする。その前に周りの景色をパチパチパチ。
ストレッチの後、先程の斜面へ。
圧雪したての誰もいない斜面を独り占め。幅いっぱい使ってロングターン。ギューンと切れ上がっていくこの感触。全身に受けるこの風圧。ゴーッという風切り音。案ずるより生むが安し、身体はしっかり覚えている。そのまま次のバーンへ。ここもロングターン。リフトからの通路を減速して通過。曲がり角手前の段差をジャンプ。橋を渡った後の緩斜面はクローチングで。 あっという間にゴンドラ乗り場着。
「プハッ。」爽快爽快。やっぱスキーは止められません。
8:30 a.m. ゴンドラ1本目乗車。まだ待ちは無し、独り貸切で。
窓を全開にして呼吸を整える。落着いたところで乗鞍岳が見え始めた。
8:40 a.m. 頂上駅着。既にボーダー達が仕度をしている。こちらはスキーの強みステップイン。身体もほぐれているので直ぐ滑降。おっとその前に山頂方面の記念撮影。
ノンストップでゴンドラ駅へ。
人が少ない。まるでプライベートゲレンデの様。このペースで滑り込んだら午前中で10回位いってしまいそう。
スキーもデフレモードに嵌り込んでいるようだ。お客さんが少ないからあの手この手で値下げ商品を用意する。それでもお客さんは来ない。このままではここも潰れてしまうんじゃ無いかと人事ながら心配になる。因みに私の今日のお昼は車の中でカップうどん。費用は軽油代、シニア券\2,000、コンビニでの買出し費用\500のみ。たぶんこれで晩御飯まで賄えるだろう。
ついこの前まで毎週一家で来てて冬のボーナス全額、足りない分はシーズンオフの預金までスキーに当てていたのが信じられない。「あの頃の反動だ。自業自得だ。」なぞと言うには余りにも酷だと思う。
かといってシニア券の権利は遠慮無く行使させて頂きますが。
暫くゴンドラ回しをしていたが、独りで黙々と滑っていても直ぐ飽きてくるので嗜好を変えて景色の満喫兼、写真撮影のため山頂駅の上の築山へ登る。
ここは表面が1cm程氷化してその下はふわふわのモナカ。降りで股まで潜りこみ引き抜くのに四苦八苦。目の前を4名程の山屋が登って行く。いいなあ春山。涸沢行きたいなあ。
まだ 11:30 a.m. 混みかけていたゴンドラがまたすき出した。この間にガンガン滑る。
混んでる時で待ち時間5分、乗車時間10分、滑降5分、計20分てところかな。
リフト待ちで並んでいると客層が良くわかる。殆どがボードの若者。スキー客は疎らで中高年の夫婦が多い。スキー板も皆はやりの、身長より短いカービング。小柄なくせに2mのストレートな板を持っているのは僕だけ。道具が古く、なんだか浮いていて気恥ずかしい。
カービングスキーが邪道だとは言わないが(実際競技スキーも今は皆カービングを使っている。)ストレートな板でカービングターンをしている者から見ると、反則のように思える。・・・家の子達もリーゼン用は今の流行の当初からサイドカーブのきついのを履いていたが。
ここ御岳ロープは開設当初からボーダーが多かった。そして当時のボーダーはマナーの悪い連中がよく目立っていた。俗に言うチンピラばかりだった。それが今ではボードの方がメジャーになってしまい、そのせいか極普通の礼儀正しく若い善男善女しかいないように見受けられる。その中に混じって我々マイノリティー(スキーヤー)はよく目立つのでいつも紳士然としていなければならない。
ゴンドラ待ちが無いとついついかっ飛ばしてしまう。お昼にしようと思いながらたて続け3本。結局午前中に11本+リフト2本。
午前の部最後はゆっくりと景色を愛でながら降る。
12:15 車に戻る。この陽射しの強さで車の中はサウナ状態。窓全開、サイドドア全開で食事の用意。
広々とした社内を独占。靴も脱ぎ上着も脱ぎのびのびする。食堂じゃあこんなに寛げない。なんという贅沢。今回のスキーはデフレ・ラグジュアリーツアーとでも命名しよう。
ついでに屋根も上げればもっと涼しく快適になるのだが、面倒だから止めておく。
13:30 午後の部に出発。カメラは置いていく。
早めに切り上げようと思いながら、後1本、後1本となかなか踏ん切りが付かずとうとう15:00。
これで切り上げ着替えを済ませ温泉目指し出発。
正面には中央、後ろには午後の陽射しにテラテラとクラスト面を輝かせている御岳。
今日は本当に良い天気、良い一日だった。出来ればもう一度来たいな。
途中、【けやきの湯】に寄り、汗を流してから帰途に就く。【けやきの湯】は未だ\400.皆さん是非【けやきの湯】を訪ねてみて下さい。俗化した【木曾温泉】や【やまゆり荘】よりずっと鄙びた情緒が味わえると思います。
17:30 には中津川近くまで到達。恵那山の巨体にはまだしっかり雪が付いている。それにしてもこの明るさ! 日の長さが実感できる。
早く帰ってビール(発泡酒)を頂こう。
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